那須のディープなローカル体験:黒田原で味わう不思議な魅力

那須町の黒田原(くろだはら)駅前。人通りもまばらで、いかにも田舎な印象です。ただ、周りが全部田んぼだとか、野山に囲まれていて良いイメージをもたれやすい田舎とはまた違います。道はしっかりアスファルトで舗装されているし、建物もしっかりと立ち並んでいるいわゆる町の姿。観光に来る外国人には紹介されにくい、特徴を説明しにくい場所です。

 

日本にどこにでもあるような目立つことの少ない場所ですが、この地域で行われていることはとても面白く、訪れた人に不思議な魅力を感じさせてくれます。

都市部に住みながら地域との関わりを持つライフスタイルを提案している「はじまりのローカルコンパス」で、10月から開催する「ひととまちがつながる旅」の那須ツアーでは、ここ黒田原で行われる「黒田原ナスタルジック映画祭」に合わせて町を訪れ、普段の観光では接点を持つことが少ないような地域の人たちとの交流を予定しています。

 

今回の記事では、なんとも言えない魅力を持つ黒田原駅前の様子と、それを主導する大森綾香さんを紹介していきます。 

平和で安心みんなの居場所「hero’s COMMUNITY Library」

だれかの家の茶の間のようで、だれもが中の様子をのぞいては挨拶をしていく。アットホームな雰囲気を持ち、町に開かれている場所「hero’s COMMUNITY Library」。主催の大森綾香さんに話を聞くと、海外の絵本を専門に並べる図書館兼コミュニティスペースだと教えてくれました。

 

中は海外の絵本が並んでいたり、英語で書かれたポスターやカードが貼られていたりする空間は、図書館というよりは子供のいる家庭の茶の間という言葉がしっくり。元は焼きそば、あんみつなどを売るパーラーだったようです。

 

大森さんは黒田原の出身で、成田空港でグランドスタッフをした後、イギリスへ留学。海外に拠点を移すものの、現在は黒田原に戻り、ALTとして小学校で英語を教えています。

 

「黒田原はローカルな場所だけれども、そこから海外に目を向ける人が一人でも増えてもらえればいい。子どもたちにいろんな場所や人、世界があるってことを見せてあげたい。」

そんな想いで大森さんはhero’s COMMUNITY Libraryを始めたと言います。

 

普段は小学生が迎えに来るお母さんを待つ場所として使っていたり、町のおばさん達の手芸教室の場になっていたり、若い男の子達が飲み会をやる場になっていたりと、その使われ方は様々。利用料金もなし。運営の方法について聞いてみても、だれかが常駐しているわけではなく、常にスペースが開放されている状態ながら、ものがなくなることはないそうです。

それを聞いて、人が勝手に家に入って野菜を置いていくという、農村の暮らしがイメージされました。町中でもそうしたことが実現できているこの場所は、まさに平和そのもので、地域の人たちの人柄の良さをこれ以上なく物語っていると言えるでしょう。

「もともと地域おこしに興味はなかった」

大森さんはhero’s COMMUNITY Library以外にも、書店なのに中にギャラリーとバーがある「金子書店B&B」や、ローカルFM「だっぱラジオ」を流している「くろだはら駅前放送局」など、黒田原の地域おこしの事業にいくつも関わっています。

 

黒田原に帰ってきたときからこういったことをしたかったのですか? と聞くと、「最初はまったく考えていなかった。」ときっぱり。

たまたま職場の知り合いに那須の面白い場所や人を紹介してくれる"おせっかいな人"がいたことがきっかけで、その人に誘われていろいろな場所に足を運ぶうちに、地域おこしに巻き込まれ、なぜか担ぎ上げられるようになったと言います。

 

大森さんのようないろいろなことを手掛けている人でも、地域に関わることになったきっかけが、巻き込まれて流されてというものだったと聞くと、地域おこしがより身近なものに感じますよね。

 

大森さんは黒田原の良さについてもこう話してくれました。

「那須には「アースデイNASU」や「アシノビト」など、人が集まる受け皿になる場が整っています。コンパスツアーでお世話になる、地域おこし協力隊の豊田彩乃さんや、「那須ゲストハウスDOORz」を運営している佐藤達夫さんも、こうしたコミュニティでつながった人々です。何かやるとなればそこのつながりで集まった人たちで動き、集まった人たちでできることを考えて何かやっている感じ。黒田原は地域の人たちがあたたかく「やれやれ〜!」って感じでバックアップしてくれています。」

地域の人たちには「言わないけれど感謝している」

地域おこしに積極的に関わるようになった大森さんにとって欠かせないのが、後押ししてくれる、地域の人たちの存在です。

 

なかでもhero’s COMMUNITY Libraryの場所を提供してくれたのが、向かいの金子書店B&Bで店主を努めている金子さん。図書館を作ろうと考えているときに「好きにやったらいい」と快く場所を貸してくれ、今では本屋さんの一角にバースペースを提供するなど、黒田原にとって欠かせないキーパーソンの一人です。那須町の地域おこし協力隊の一人、中村舞子さんと日々激論を交わしながらも、黒田原を盛り上げてほしいと思いサポートは惜しまない様子。

 

大森さん中村さん共に、「本人には言わないけれど、すごい感謝している」と言います。黒田原が不思議な魅力を持つような町になったのも、こうした若い人のエネルギーに加えて、地域に根ざした人たちのサポートは欠かすことのできない大切な要素のようですね。

黒田原ナスタルジック映画祭と地域を盛り上げるサポーター

ツアーで訪れる「黒田原ナスタルジック映画祭」は今年で4年目。大森さんや中村さん、金子さん達が一丸となって作り上げている映画祭で、黒田原駅前の通りに3つのブースを用意し、それぞれで違った映画を流し催しものを行います。

 

最後にこちらのイベントを主導している中村舞子さんについても紹介します。

(中村舞子さん:後ろが彼女が徐々に内装を整えているバースペース)

 

中村さんは2年前から活動している那須町の地域おこし協力隊の一人。埼玉県出身でもともとはスタイリストをしていたそうです。現在の地域おこし協力隊の中でも一番いい例として、地域と関わりながら自分のやりたいこともうまく実現している人だと大森さんは言います。

 

那須町の伝統工芸である「那須の篠工芸」の技術を磨いてショップをオープンしたり、もともとただの本屋さんだった金子書店をバーにするべく動いたりと、多方面に渡って地域と関わっています。地域とつながってみたいと思っている人には、きっといろいろな話しを聞かせてくれるでしょう。中村さんは、黒田原ナスタルジック映画祭の当日、運営側で出ている予定なので、現場で話すこともできますし、時間があればツアーにも顔を出してくれるそうです。

コンパスツアーがいよいよ開催します

今回紹介した、大森さんや中村さん、金子さんに会ってみたいという人も、ぜひツアーへの参加をお待ちしています。

 

10月1日に東京で行われる初回のオリエンテーションを皮切りに、足利と那須は別日程にて10月に1回、11月に1回の、計2回のフィールドワークが実施されます。
(オリエンテーションに参加できない、という方も受付していますので、事務局へ相談してみてください)

 

毎年好評で幕を閉じるコンパスツアーの募集締切ももう間もなく。なにか新しく踏み出すきっかけがほしいという方のツアーの参加をお待ちしてします。これまでの暮らしにローカルを少しプラスしてみませんか。

 

ツアー詳細はこちら

https://www.hajimari-local.jp/event/17long/