マイペースで地域に関わろう。地域に巻き込む人、巻き込まれた人のはなし

地域に関わる活動がしたい。でも、きっかけがない。

 

その想いを実現するのは、1人だと心細いかもしれないけれど仲間や協力者がいると一気に加速するものです。

 

都市部に住みながら、地域との関わりを持つライフスタイルを提案している「はじまりのローカルコンパス」では、10月から栃木県内各地で様々なプログラムを開催します。足利で実施されるプロジェクトでは、小商い体験をしてみようというのがテーマです。

 

今回ご紹介するのは、足利で開催されるプログラムの仕掛け人、柏瀬誠さん。足利で様々なプロジェクトを企画しながら、「足利に関わりたい」「足利にUターンをしたい」という人たちのサポートをしてきた方です。

 

そこで、柏瀬さんのこれまでの活動と、共に活動をした方々のお話しを伺いながら、地域の情報を手に入れる方法、継続的に活動を続けるためのコツを伺いました。

 

大変な時はあったよ。でも、楽しいから続けられる

柏瀬誠さん(足利市出身)

15年間の会社生活を経て市役所職員となり、現在は移住定住相談窓口を担当。「あしかがまちなか探検隊」を結成して、定期的にまちあるきを行い、まちの魅力を発信するとともに、飲食店や自治会等と連携したイベントを共催しまちの活性化を図る。

 

―柏瀬さんは数々のプロジェクトを立ち上げてきていますが、最近では「ほろ酔いウォーク」が栃木県内外で話題になっていますね。改めてどんなイベントなのか教えてもらえますか。

 

柏瀬さん:ありがとうございます。足利には、看板はあるけれどメニュー表が無かったり、営業時間も決まってなかったり。初めての人には入りにくいけれど、良いお店がたくさんあります。

 

そんなお店に協力してもらい、ほろ酔いウォーク期間中は1000円でお酒とおつまみがついてくる“ほろ酔いセット”をだしてもらっています。協力店舗は20軒くらいかな。3軒はしご酒をした人にはプレゼントがあります。

 

ほろ酔いウォークのガイドマップ。スタンプラリー形式になっています。こちらのデザインは足利出身で埼玉県在住の、Uターンを考えているデザイナーさんに依頼したそうです。

―気になるけれど、入りにくいお店ってありますよね。すごく良い企画ですね。

 

柏瀬さん:今でこそそう言ってもらえるけれど、最初はなかなかうまくいかなかったんだよ。思ったよりも人が来なくて、協力してくれた店舗に「お客さん来ないじゃないか」って言われたりして。でも、大丈夫大丈夫、って言い続けていたらお客さんも増えていって上手くいくようになったんだよね。

 

―けっこう辛かったのでは…?

 

柏瀬さん:ちょっと大変な時期はあったよね。でも、楽しいから。

 

 

―数々のプロジェクトを立ち上げている柏瀬さんの、その原動力って何なのですが?

 

柏瀬さん:僕は、今が第二の人生だと思っているんですよ。一時期、足利から都内まで、通勤で往復5時間かけていたのね。それが今では自転車で15分くらいの生活なので、そうすると4時間45分生まれるわけだから、いろいろできるなって思ってね。なんでもやろうと。

 

 

―それで生まれた時間で活動されようと。

 

柏瀬さん:そうだね。いろいろやっているように見えるかもしれないけれど、1つのことをやっているつもりでいるので。

 

見えてくるのがたまたま、ほろ酔いウォークやマルシェ、物件紹介になっているかもしれないけれど。同じことに向かって繋がっているんだよね。

 

 

―ありがとうございます。柏瀬さん自身が楽しんで活動をしているからこそ、協力者が現れるんだろうなと感じました。

 

 

 

そんな柏瀬さんのアシストもあり、足利で生活を始めたり、足利の活動をすることになった方々をご紹介します!

 

 

もらった情報をもとに、自分の目で確かめる

木村勲武さん(足利市出身)

東京・下北沢等の飲食店で料理を修業し、今年6月奥様と足利市へ移住。昭和初期に建築された長屋を改装し、9月におでんとおばんさいの店「もっくもっく」をOPEN予定。

 

―木村さんは足利にUターンして今年9月からおでん屋さんを開店するということで、おめでとうございます!もともとUターンを考えていたのですか?

 

木村さん:ありがとうございます。東京で飲食店をやっていたのですが、そろそろ自分の生活のあり方を見直したいと思っていて。Uターンに限らず、日本全国を移住候補として検討していました。

 

いろいろ調べていて、栃木県もいいかもしれない、と。なかでも足利って発展途上だから、自分で何かできたら面白いんじゃないかと思うようになったんです。

 

足利で活動している人とどうやって出会っていいかわからなかったから、朝カフェ(足利市内で開かれていた朝活イベント)に参加してみました。その日のテーマは移住とは関係なかったのですが、たまたま隣の席に柏瀬さんがいたんです。

 

 

―そこで柏瀬さんが登場するのですね。

 

木村さん:朝カフェの時は密な話はしていなかったのですが、その後いろいろと足利のイベントのお誘いをいただいたりとかして。休みが合った日は参加しているうちに移住先は足利が良いなあと。

 

 

―イベントを参加しつつ、足利のことを知っていったという。

 

木村さん:そうですね。地域おこし協力隊の募集の情報をもらったりもして。それでぐっと足利に帰るのが具体的になってきました。結果的に妻が地域おこし協力隊になったのですが。

 

もっくもっくを出店される物件。4軒続きの長屋です。

 

―木村さんはなぜ、おでん屋さんを開業されることにしたんですか。

 

木村さん:足利で何をして生きていこう、って考えて。漠然と、地域に関わる仕事が良いなと思っていたんです。人が集まる拠点をつくりたいなと。本当は民宿をしたかったのですが、初期投資が大きいのでハードルが高く、飲食店をすることにしました。

 

東京とは違って人が少ないから本当にできるのかな、と不安なうえに家賃も高いところが多くて。それじゃやっていけないなと思ったときに、柏瀬さんに高くない物件もあると教えていただきました。

 

 

―なかなか不動産屋さんに載っていない情報を、自分で探すのは難しいですものね……こういう時に繋がりがとても重要そうです。移住を実現させた木村さんですが、それができた理由を伺ってもよろしいでしょうか。

 

木村さん:いただいた情報を頼りにしつつも、それで安心せずに自分でも動くことですかね。実際に足を運んで、自分の目で確かめることを大切にしました。特に、足利は都内から近いので行き来しやすいですしね。

 

 

柏瀬さんの協力もいただきつつ、1つ1つ納得しながら自分のペースで検討を進められたのが良かったのかもしれません。

 

 

活動を楽しく続けるためには、無理をしないこと

山田夕湖さん(足利市出身)

現在は都内で設計事務所を開設。週末など地元足利で古民家の利活用を考える団体「つなぐつむぐ会」の代表を務める。平成29年度より足利市「市民力」創出協働事業を受託し、市内の空き家調査や空き家を会場としたイベントを誘致し、空き家の利活用方策を提案している。 

 

―山田さんは、都内で設計事務所をしながら、週末に足利で「つなぐつむぐ会」の代表をしていますが、どういった経緯で関わることになったのですか?

 

山田さん:足カフェ(足利にゆかりのある人たちが集まって足利のことを話す会)の時に、たまたま近くで仕事があったので行ってみたんです。そこで話を聞いて、足利でいろいろなことが始まっていることがわかりました。

 

足利にはいつか関わろうと思っていたけれど、すでに活動されている人たちがいるなら私はやらなくてもいいかなと思っていたのですが。その場にいた柏瀬さんに「建築をやっていて古い建物に関わっている」と言ったら、ちょうどそんな活動ができる人を求めていると言われたんです。

 

 

―実は手が足りていない部分があったんですね。

 

山田さん:私は古い建物や町並みに興味があるので、既に足利のまちなかを調査したりしていて。去年、市民創出協働事業に応募して委託を受けることになったんです。

 

もともと私も会のメンバーも別に仕事があるから、1年目は調査をメインにした活動を予定していたんです。だけど、実際「市民協働事業」として活動を始めたらそんなことはなく。他にも、どんどん、やることが多くなって(笑)

 

 

文星芸術大学と共同で古民家のリノベーションにチャレンジされています。

 

―巻き込まれちゃったって感じですか(笑)

 

山田さん:スケジュールが目いっぱいだって言っても、それを知ったうえで巻き込まれています(笑)

 

 

―お忙しそうですもんね(笑)。それでもやっちゃう理由って、何なのですか?

 

山田さん:うーん……柏瀬さんは、言ってることはもっともだし、何より仕事が早いんですよ。言うだけじゃなくて率先して動いてくれるから、よっぽど無理じゃなければ断る理由がないんですよね。今朝も草刈りやってくれたし(笑)

 

でも、何かをやるときって少し不安もあるけど、どんなに忙しくても動く。そうすると次の“何か”に出会うんです。それが楽しいし、おもしろい。こういうことだと思うんですよ。

 

 

―今が新しいことを始めるタイミングなのかな、って感じますか?

 

山田さん:こうして巻き込まれたのも何かの縁だと思うんですよね。時間の制限があるからできない部分はでてくるけれど。活動は結構、地味で地道なんです。時間のかかることだと思って、取り組んでいます。

 

最初から、ゆるくやるって言ったからね?って言ってあるんです。そう言える関係もありがたいですよね。

 

 

―新しいことを始めたり、山田さんのように地域のプロジェクトに関わるときの姿勢で、大切なことって何でしょうか?

 

山田さん:最初から根詰めて関わるのは、疲れちゃうのでだめですね。楽しく長く続けられるのが大切です。例えば、イベントがあって1日スタッフをお願いされたとしたら、「予定があるから12時から14時までしかいられません」と言える人が、長く続きがち。無理せず、ちょうどいい距離感で付き合うのが良いと思います。

 

柏瀬さんも「自由参加・自由解散」ってよく言うんですよ。わたしも無理なく「自由参加・自由解散」にしています(笑)

 

 

足利に興味を持ってくれた方は、120%応援します

足利のまちなかを案内してくださる柏瀬さん

 

 

木村さんと山田さんのお話しを伺って、都市部に住みながら地域に継続的に関わり、情報を受け取る姿勢を教えていただきました。自分のペースを守りながらも、主体的に行動をすることが大切のようです。

 

柏瀬さんのように地域に関わる際の入り口となり、活動に巻き込んでくれる人がいるのはとてもありがたいですね。

 

最後、柏瀬さんにはじまりのローカルコンパスでどんな人に来てほしいかを伺うと、「足利に興味を持ってくれれば誰でも大歓迎。120%応援しますよ」という答えが返ってきました。

 

そんな心強いサポーターがいる足利のプログラムは、10月1日から始まります。足利のことを知りたい、継続的に関われる地域を探しているという方をお待ちしております!

 

 

ツアーの詳細はこちら

https://www.hajimari-local.jp/event/17long/

※足利のプログラムと、ほろ酔いウォークが同日開催なので実際に参加することもできます!

 

 

(文:鈴木彩華)

 

 

 

足利のプログラムの紹介記事はこちら